アトピー・慢性湿疹外来

アトピー・慢性湿疹外来のご案内

当院では、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、手湿疹(手荒れ)、痒疹、貨幣状湿疹などの慢性湿疹の症状にお悩みの方を対象にした「アトピー・慢性湿疹外来」をご用意しています。悪化因子の確認、状態の評価、それに伴った適切な治療を行うことで、湿疹発症の頻度を徐々に下げ、快適な日常生活が維持できるように取り組んでいます。

当外来の説明は、治療方針の概要説明と、院長 山本綾子によるコラム「アトピー・慢性湿疹治療のヒント」に分けて構成されています。当外来に関して参考になる内容を記載させていただきますので、ご来院の前にお読みください。事前にある程度内容を把握いただければスムーズに診療をスタートできます。ご質問や疑問がありましたら、診療にてお気軽にご相談ください。

対象となる症状

主に以下の症状を対象としています。ご自身の症状が当てはまるのか分からない場合は、通常の保険診療を受診いただければ、確認をさせていただきます。当ページにおける説明では、下記症状を総称し「アトピー・慢性湿疹」と記させていただきます。

ご予約方法

  1. アトピー・慢性湿疹外来(保険診療)は、オンライン予約システム・お電話にてご予約下さい。お電話の場合は、「アトピー・慢性湿疹外来」受診希望の旨をお伝えください。保険診療は空きがあればいつでもご予約いただけます。
  2. ご来院の際、保険証・診察券・お子様の場合は医療証をご持参ください。

治療方針

目指すものは、「継続的に湿疹を抑えられるお肌づくり」です

一旦治まってもまた繰り返し発症する、良くなったり悪くなったりする湿疹に長年お困りの患者様に、継続的に湿疹を抑えられるお肌づくりを実践いただき、湿疹のことを思い出すことのない毎日を送っていただきたいと考えています。基本的な治療方針は、「外用治療での症状改善(外用指導)」、「漢方治療による体質改善」、「運動処方を通じた、湿疹の原因となる悪化因子の除去と、皮膚のバリア機能向上」となります。詳しくは以下をご覧ください。

  • 外用治療(外用指導・スキンケア指導)
    基本的には「ステロイド外用剤・保湿剤」の外用治療の実施。外用薬については、その使用方法(塗り方)や皮膚の保護がとても大切なため、患者様の状態に応じた「効果的なお薬の使用方法の指導」も行います。
  • 漢方治療
    漢方治療には、「人が本来持つ病気への抵抗力を高める」という基本的な考え方があります。西洋医学的治療である保湿剤やステロイド外用剤に、自らの自然免疫の力を引き出す漢方治療をうまく組み合わせることで、治療効果を上げることが期待されます。
  • 運動処方(生活の中での運動実践・身体の使い方の習慣改善)
    簡単なエクササイズや呼吸法改善などを通じた、日常生活動作・身体の使い方や生活習慣の改善をご提案します。血流・リンパ流改善を通じた皮膚のバリア機能を向上させ、湿疹が発症し難い身体を目指します。

治療には、湿疹を発症させる悪化因子の確認と、その原因に応じた適切な治療・予防がとても重要となります。アトピーをはじめとする各湿疹の発症要因は、主に「皮膚の生理的異常」「免疫学要因」「外的要因」の3項目が絡み合って発症すると考えられています。皮膚のバリア機能の低下、遺伝的に発症しやすい体質、精神的要因や生活習慣によるもの、または環境的要因、例えば、汗、髪の毛の接触などの非特異的刺激、日頃使っている化粧品による誤ったスキンケア例、シャンプーや石鹸だけでなく、ときに治療のために使っていた薬が悪化因子であることもあります。

当院では、上記「皮膚の生理的異常」「免疫学要因」「外的要因」の3項目を踏まえ、さらに漢方治療と運動処方を組み合わせた治療法のご提案を行っています。この治療法は、総称して山本綾子による「アトピー発症機序理論」と呼ばれ、今では多くの患者様に知ってもらえるようになりました。特に運動処方については、当院独自のものとなります。アトピー・慢性湿疹の様に繰り返し発症する症状の一因として、体形のバランスの崩れが発端になっているとも考えています。日常の生活における身体動作やこれまでの習慣の積み重ねから、知らず知らずのうちに、身体に負担のかかりやすい動作を行ってしまう場合、それが結果的に皮膚にも悪い影響を及ぼします。この考え方は、当院独自の改善・予防法である「運動療法」につながるものでもあります。(詳しくは後述しています。)

悪化因子を探る段階においては、湿疹が、身体の他の部位の問題によって引き起こされている可能性を考えることにも重点を置いています。皮膚の問題だけではなく、時には身体の内側の、筋肉、骨格、内臓や血管の問題が発症を引き起こしているかもしれません。「湿疹部位(どの場所に発症しているのか)」をしっかりと見極め、皮膚から身体全体の全てを診ることが大切であり、皮膚をじっくり診ることによって、「今発症している”明らかな湿疹”」だけでなく、正常の皮膚のキメが乱れた状態から、「明らかな湿疹一歩手前の、”近い将来に発症しそうな湿疹”」(悪化因子)が見つかることもよくあります。

治療内容(外用治療・スキンケア指導・漢方治療・運動処方)

外用治療(外用指導・スキンケア指導)と、漢方治療について

アトピー・慢性湿疹治療では、かゆみや湿疹を抑えるために基本となる、「ステロイド外用剤・保湿剤の外用治療」と、症状に応じた「効果的なお薬の使用方法の指導(スキンケア指導)」を行います。処方された薬を正しく使用し、定期的に通院いただくことが大切です。

皮膚疾患において、最も多く使用される薬剤が外用薬です。軟膏は、単に塗ればよいと簡単に考えられがちですが、塗り方一つでその効果が全く違ってきます。実は、内服薬と比べて取り扱いが難しく、使用法の誤りにより副作用や軽快しない例もあります。使用方法や皮膚の保護がとても大切なため、患者様の状態に応じて、どの外用剤を、どの部位に、どのくらいの量で、どのように、どの状態から、どの状態まで外用するかなど、外用指導・スキンケア指導を行います。

保湿外用剤

保湿外用剤「表皮バリア機能」が弱っているため、日常のスキンケアによる保湿は非常に重要です。保湿外用剤には、表皮のバリア機能を補い、皮膚炎の再燃(繰り返し悪くなること)を抑える効果があります。保湿剤にはさまざまな種類があります。軟膏の”べたっと”した触感が苦手な方には、クリームや乳液、さらっとしたローションもありますので、症状や患者様のご希望によって選択できます。また、非常に乾燥が強い方の場合は、単に保湿剤を塗るだけではなく、乾燥させてしまう要因の確認も行う必要があります。

ステロイド外用剤

ステロイド外用剤ステロイド外用剤は、アトピー・慢性湿疹治療において、とても大切なお薬です。「日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」において、「ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤で、その強さを把握し,個々の皮疹の重症 度に応じて適切なステロイド外用薬を選択し、さらに病変の性状、部位により剤型を使い分け、炎症を十分に抑制するように使用する。」ことが大切であると記されています。

一口にステロイド外用剤といっても、「塗る部位・塗る量・塗り方」によって全く効果が変わってきます。同じお薬であっても、当院で塗り方の指導を受けていただくと、非常に効きが良くなって驚かれることがよくあります。もちろん、患者様によって皮膚の症状は異なりますし、同じ患者様でも、治療を始めると皮膚の状態は変わります。定期的に受診いただき、塗る場所や量などを確認するようにしましょう。定期的な受診で治療を進めることで、皮膚をしっかりと良い状態に保てるようになり、症状に応じてお薬の量を減らしていきます。

タクロリムス軟膏

タクロリムス軟膏「プロトピック軟膏」という名前で知られる外用剤です。ステロイド外用剤と違い、皮膚が薄くなるという副作用が起きないため、長期的に使用しやすい薬です。しかし、症状が酷く、じくじくしている時や引っ掻いてびらんになっている時は使用できないため、ステロイド外用剤で症状を落ち着かせてから使用するのがポイントです。また、火照りの副作用が生じる場合は、火照り症状が出にくくなるためのコツを理解することが大切です。しっかりと医師と相談の上、治療方針を確認しながら進めていきましょう。

抗ヒスタミン薬

治療の基本は外用剤(塗り薬)ですが、補助的な役割を持つ、かゆみを抑えるための内服薬です。かゆみによって引っ掻いてしまうと症状が悪化するため、抗ヒスタミン薬を併用することがあります。ただし、ステロイド外用剤を正しく使用することにより、かゆみが抑えられるため、抗ヒスタミン薬が不要になることがよくあります。かゆみが強い方は、まず、症状に合った正しい外用薬の使い方を確認する必要があります。

漢方薬

漢方薬漢方治療には、「人が本来持つ病気への抵抗力を高める」という基本的な考え方があります。西洋医学的治療である保湿剤やステロイド外用剤に、自らの自然免疫の力を引き出す漢方治療をうまく組み合わせることで、治療効果を上げることが期待されます。

「皮膚は身体の内面を映す鏡」と言われるように、皮膚の健康は、身体の内側や心の健康によって形成されています。言い換えれば、皮膚の病気は、身体全体のバランスを整え、内側から異常をなくしていくことが重要となります。

具体的な例として、アトピー・慢性湿疹にお困りの方は、「顔が火照りやすい、のぼせやすい」「手足が冷える」「胃腸が弱く、便秘や下痢となりやすい」「化膿しやすい」「肩こりがひどい」といった皮膚以外の症状にもお困りの場合が多く見られます。逆に、この身体の内側の症状が皮膚の症状の原因であるケースもあります。主にこのような症状の方に対して、内側からのアプローチとしての漢方薬をご提案します。

  • 原則、保険適用の漢方薬のご提案を行います。
  • 当院では、漢方薬のみを使用するアトピー・慢性湿疹の治療は対応しておりません。保湿剤、ステロイド外用薬を併せて使用します。

運動処方(実生活での運動実践・身体の使い方の生活習慣改善)について

身体中を巡る、リンパの流れ外用治療などによって、ある程度湿疹の症状が治まり”運動に支障が無くなれば、独自の運動メニューを行っていただきます。この運動メニューは当院独自のもので、その目的は、運動を通じた日常生活における身体の使い方や生活習慣の見直しから、血流・リンパ流の改善を図り、皮膚のバリア機能を向上させ、そして良好に維持することで、湿疹の発症しにくい体質に改善することにあります。

呼吸の仕組みの理解アトピー性皮膚炎など慢性湿疹は様々な原因が上げられますが、当院では、アトピー・慢性湿疹の様に繰り返し発症する症状の原因として、体形のバランスの崩れが発端になっているとも考えています。日常の生活における身体動作において、知らず知らずのうちに、身体に負担のかかりやすい生活習慣(動作)を行っている場合、それが結果的に皮膚にも悪い影響を及ぼすことがあります。長期間に渡るこのような習慣(動作)は、皮膚をはじめ、身体全体の健康面で望ましくない方向に身体を形成させてしまいます。その結果、不良体形による皮膚の伸縮不良やうっ滞、筋力や脈管力(血流やリンパ流)の低下、自律神経の乱れなど、アトピーのような慢性湿疹を発症させる原因になることが分かっています。

運動内容は、受診毎に診察室にて1~2つの簡単なエクササイズを、その時のお身体の状態に合わせてお伝えします。個々の患者様の症状に合わせたもので、日常生活で軽い運動ができる方であれば、基本的に誰でも取組みが可能なものが中心です。当外来の運動処方は、原因の追究から実践、改善に至るまで、一般的な皮膚科における取組みとは異なりますが、リラックスした軽い気持ちでスタートされ、楽しみながらの実践で、徐々にお肌の調子に変化が見られる方が多くいらっしゃいます。また、運動なので、「基本的に副作用が無い」「湿疹の改善に加えて同時に心身とも健康になる」「自律神経が整い、ストレスの解消にもなる」などもメリットとして上げられます。

治療を成功させるために大切なこと

これまでのたくさんの患者様を診てきた経験から、「治療の主体は患者様であることを認識いただくこと」、「患者様自ら正しく病態や治療法を理解すること」、そして「日常生活においても、自主的、かつ積極的に生活習慣を見直し、治療方針に従った行動を取ること」が、治療を成功させるためのポイントになります。

難しく聞こえますが、具体的には、「定期的な受診に必ずご来院いただくこと」、「処方されたお薬を正しく使用すること」、「実生活での運動療法の実践や生活習慣の改善など、診療方針に沿い、積極的に行動すること」が必要となります。つまりは、治療の効果の結果は、患者様の行動次第と言える部分がありますので、診療と同じくらいに実生活が大切です。患者様にはこれらのポイントをご理解いただき、治療を成功させていただきたいと考えています。

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